その子は、僕が王であると告げても怒ったりしなかった。
 追いかけても来なかったし、逆に変にこびることもなかった。

「とりあえず、スープどうぞー。今日はお野菜多目だから、きっと元気出るよー」


 渡される、スープ…らしきもの。
 野菜…のようなものが浮いた、少しだけ色のついた、お湯。


「いただきます」


 僕の横で、箱入り娘のお嬢様が食事を始める。
 驚いたことに、彼女の瞳には涙がにじんでいた。

「え、泣いちゃうほどおいしくない!?」
「……ううん、違うの。すごく、おいしい」

 ずずっと鼻をすすりながら、スプーンを口に運ぶ。


「いただきます」