黒い境界に背をもたせ、僕は座り込んでいた。膝の上には、安らかな君の寝顔。さっきから何度か名前を呼んみるんだけど返事をしてくれない。きっと色々あって少し疲れたんだろうね。僕はここにいるから、少し眠るといい。

 空は広かった。
 ただ広くて、星が冷たく僕を見下ろして、吹く風は少し冷たい。

「僕の、王国」

 小さな小さな、僕の箱庭。
 こんなにも冷たく、こんなにも遠い。


 あの夜の風の冷たさ、あたりの静けさ、空の遠さ、壁の固さ、全て覚えている。こんなにも鮮明で、こんなにもリアル。こんなにも近くて、こんなにも現実。

 ――眠れない夜が続く。

 目を閉じればすぐにあの夜が蘇る。目を開ければ君たちがいない夜が見える。
 ねえ、あれは本当に起こったことなの?夜のまどろみの中で、だんだんとそれがわからなくなるんだ。実は二人と出逢ったことすら嘘で、僕は最初からこの部屋を出てなんかいなくて、本当は全てただのつまらない夢か何かで、この悲しみも、この空しさも、全てはただの幻想なんじゃないだろうか。ねえ、そうなんだろう?ただ僕が一人で勝手に夢を見てしまっただけなんだろう?あの窓の向こうには何もなくて、あの壁の向こうには誰もいなくて、ただ僕が一人で、この部屋の中で、たった一人で、勝手にこうしてしゃべっているだけなんだろう?
 最初から僕はここにいた。最初から他には誰もいなかった。最初から全ては夢だった。最初から君たちはいなかった。

 その証拠に

「ほら、誰も答えてくれやしない」