「こっちよ」

そう言って、その白い少女は僕の手を引いた。

ぱたん

「ここなら大丈夫。他の人は絶対来ないから」
「こ、ここは?」
「恐らく朽ちた民家か何か」

む。

「朽ちてないよー私の家ですー」


 ……。

「す、すまない!あ、お、恐らくただの民家か何かだ!」
「そ、そうね!ただの民家だわ!」

少し間をおいて、薄暗い闇の中から笑い声が漏れる。

「反応がおもしろかったから、許す!」

マッチがすられ、蝋燭に火が灯された。
小さな小さな、今にも消えてしまいそうな明かり。その中で、静かに、至極穏やかに、物語は加速する。